ごめんねハイデッガー

ハイデガーが読み勧められないので、他の本を先に読みます

本を読みました 【大相撲殺人事件  小森健太朗著/文春文庫】

 小学生の頃、課題図書より先に趣味で借りた怪談本を読んで親に怒られた。まぁそれも大人にしてみりゃ下らない本だったし、親としては児童書の様なイラストだらけの怪談本なんか後で読めと言う事だったんだろう。そんな出来事があったからか、あまり同時平行で読んだり一度読み始めた本を脇に置いて別の本を読んだりはしない。

 

 しかし、だ。ハイデッガーの「存在と時間」がなかなか読み進められない。その間にも買った本達は積み上げられ、部屋は散らかっていく一方だ。そして最近届いた、なんとも魅力的なタイトルの本それは……「大相撲殺人事件」である。

由緒ある歴史を誇る相撲部屋・千代楽部屋を訪れたアメリカの青年・マーク。ひょんなことから力士となるべく部屋住みの身となった彼だったが、そんな彼を待っていたのは相撲界に吹き荒れる殺戮の嵐! 立ち会った瞬間爆発する力士の体、頭のない前頭の惨殺死体、連日順々に殺されていく対戦力士、女性が上がれないはずの土俵上に生じた密室状態、身体のパーツを集めるがごとく発生する連続殺人、洋館に集まった力士達を襲う見立て殺人……。マークの名推理が土俵の上に冴えわたる! 新本格の旗手が贈る超変格ミステリ登場。

と言う背表紙の粗筋、僕の周りのツイッターユーザーの方は見たかも知れない。こんな面白そうなジャンクフード、手を出さない訳には行かない。個人的には超傑作B級映画の「マチェーテ•キルズ」を彷彿とさせるものがあった。

 届いてから数日は我慢したものの、遅々として進まぬ「存在と時間」に飽いてしまい、久々に「順番に読む」を言う自分のルールを破って手を出した。ごめんね、ハイデッガー

 

 結論から言えば、背表紙の粗筋ほどには速度やBPMの高い話では無かった。ブッ飛んでるはブッ飛んでるけど、どうにもヌルリとした速度でいまいち効き目が薄い。とはいえインターネット小説でもあるまい、速度はこんなものなのかも知れないな、などと思いながら角界の40%が死ぬ話を読んでいる。莫迦な話だ。それは間違い無い。

 角界の40%を失いつつ運行を続ける相撲協会と言う狂った世界。いや、世間もそうだし狂ってない奴なんか一人もいないこの小説世界は中々良い。良いんだけど、何かこう、もっと「ハイ」になりてぇーなァー!と思っちゃう。

 細かい相撲の話はまぁ良いとして、2時間サスペンスドラマの詰め合わせみたいな感じ(反本格サスペンスだとかオマージュだとかはさておき)なので、余裕があれば読んでも良いんじゃないだろうか。掃除はまだ始まってもいない。